2026年8月28日

こんにちは。北柏駅前内科・糖尿病・甲状腺クリニックです。橋本病と診断された方から、「食事で気をつけることはありますか?」「昆布は食べないほうがいいですか?」「運動しても大丈夫ですか?」といった質問をよく受けます。
橋本病があっても、甲状腺ホルモンが安定していれば、基本的には通常の日常生活を送ることができます。
特別な食事制限や運動制限が必要になるケースは多くありません。
一方で、ヨウ素の過剰な摂取、甲状腺ホルモン薬の飲み方、定期的な甲状腺機能の確認など、知っていただきたいポイントがあります。
橋本病の日常生活で気をつけたいこと
橋本病の方が日常生活で特に意識したいのは、次の5点です。
- ✓バランスのよい食事を心がける
- ✓ヨウ素を極端に摂りすぎない
- ✓甲状腺ホルモン薬を正しく服用する
- ✓体調に合わせて運動する
- ✓定期的に甲状腺機能を確認する
橋本病の食事|特別な食事制限は必要?
橋本病だからといって、特別な食事療法を行う必要は基本的にありません。
肉、魚、卵、大豆製品、野菜、果物、穀類などをバランスよく食べ、極端な偏食を避けることが大切です。
インターネットでは、「橋本病では小麦を避けたほうがいい」「乳製品を食べないほうがいい」など、さまざまな情報があります。しかし、橋本病の方が一律にこれらの食品を制限しなければならないという根拠はありません。
食事制限をしすぎることで、かえって栄養バランスを崩してしまうこともあります。
橋本病ではヨウ素に注意
橋本病の食事で特に質問が多いのが「ヨウ素」です。
ヨウ素は甲状腺ホルモンを作るために必要な栄養素で、昆布、わかめ、のりなどの海藻類に多く含まれています。
日本では海藻を食べる習慣があるため、ヨウ素については「不足」よりも過剰摂取に注意することが重要です。
ただし、橋本病だからといって海藻を完全に禁止する必要はありません。
日本人はヨウ素をどのくらい摂っている?
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上の成人におけるヨウ素の推奨量は1日140μg、耐容上限量は1日3,000μg(3mg)とされています。
一方、日本人を対象とした全国調査では、2014年以降に32道府県・49自治体、約3万2千人を対象として尿中ヨウ素濃度が調査されています。
その結果、尿中ヨウ素濃度の中央値は269μg/Lで、WHOが示す適量の範囲(100~299μg/L)に入っていました。一方で、地域によっては過剰摂取に相当する300μg/L以上の地域も認められています。
橋本病では昆布を食べてはいけない?
「橋本病では昆布を食べてはいけない」と思っている方もいますが、これは少し極端な考え方です。
重要なのは、通常の食事で海藻を食べることではなく、ヨウ素を大量に摂取することを避けることです。
特に注意したいのは、
- 毎日大量の昆布を食べる
- 昆布だしを非常に多く摂取する
- 都こんぶなどの昆布のお菓子を習慣的に食べる
- ヨウ素を含む健康食品やサプリメントを利用する
- 昆布エキスなどを含む食品を大量に摂取する
といったケースです。
実際、日本甲状腺学会には、昆布を習慣的に摂取していたことでヨウ素摂取量が増加し、甲状腺機能異常を認めた症例の報告があります。
橋本病とヨウ素|摂りすぎるとどうなる?
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になりますが、摂れば摂るほど甲状腺によいというものではありません。
ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺ホルモンの産生が一時的に抑制され、甲状腺機能低下を起こすことがあります。
特に橋本病では甲状腺に自己免疫性の変化があるため、ヨウ素の過剰摂取によって甲状腺機能が低下してしまう場合があります。日本甲状腺学会のガイドラインでも、ヨウ素摂取過多は一過性の甲状腺機能低下症の原因となり得ることされています。
したがって、橋本病の方がヨウ素を「不足しないように」と考えて、ヨウ素を含むサプリメントなどを積極的に摂取することは控えましょう。
橋本病の薬はいつ飲む?|レボチロキシンの飲み方
甲状腺機能低下症に対するレボチロキシン(チラーヂンSなど)を服用している場合は、毎日決められた方法で服用することが重要です。
レボチロキシンは、食事や一部の薬・サプリメントによって吸収が変化することがあります。
特に鉄剤やカルシウム製剤などを服用している場合には、薬を飲むタイミングについて主治医や薬剤師に確認しましょう。
「薬を飲んでいるのにTSHが安定しない」という場合には、単純な薬の量の問題だけでなく、飲み忘れや服用方法、他の薬・サプリメントとの関係が影響していることもあります。
自己判断で薬を増減するのではなく、甲状腺機能検査を受けながら調整することが大切です。
橋本病でも運動していい?
橋本病において、とくに運動を禁止する必要はありません。
甲状腺機能が正常で、体調に問題がなければ、ウォーキング、ジョギング、筋力トレーニング、スポーツなどを通常通り行うことができます。
一方、甲状腺機能低下症が強い場合には、疲労感や筋力低下などの症状が出ることがあります。
橋本病では定期的な血液検査が大切
橋本病では、甲状腺機能が正常な状態から、時間の経過とともに甲状腺機能低下症へ移行することがあります。
そのため、甲状腺機能が正常だからといって、その後ずっと検査が必要ないというわけではありません。
血液検査で定期的にTSH、FT3、FT4などを測定し、甲状腺ホルモンの状態を確認することが重要です。
また、疲れやすい、寒がりになった、体重が増えた、便秘が続く、むくみが強くなったなどの変化があれば、次回の定期検査を待たずに早めに医療機関へ相談しましょう。
まとめ|橋本病でも普通の生活を送ることができます
橋本病と診断されても、甲状腺機能が安定していれば、日常生活を大きく制限する必要はありません。
特に食事については、特別な食事療法を行うよりも、バランスのよい食生活を心がけることが大切です。
ヨウ素については、日本人は海藻などから比較的多く摂取していますが、通常の食事まで制限する必要はありません。注意したいのは昆布などの大量摂取や、ヨウ素を含むサプリメントなどによる過剰摂取です。
橋本病だからといって、必要以上に生活を制限する必要はありません。甲状腺機能の状態を確認しながら、無理のない生活を続けていきましょう。